第5章 Shake it !
【智side】
潤が席を立って10分後。
後を追うように翔くんがフロアを出てって。
しばらくしたら、2人揃って戻ってきた。
翔くんは、普段と特に変わったとこはないように見える、けど。
俺には、わかる。
ほんのちょっとだけ、ほっぺた赤くなってる。
トイレにしちゃ、やけに長かったし…。
怪しい………
「おーちゃん!また仕事しないと課長に怒られるよ?」
隣の席の相葉ちゃんが肘で突っついてくるけど、構わずにジトッと翔くんを睨み付けてると、不意に目が合った。
「大野、なにしてる」
いつもの鬼の櫻井の目でこっち見たけどさ。
そんな赤いほっぺで睨まれたって、怖くねぇしっ!
俺はガタンと椅子を蹴って立ち上がると、足を踏みならしながら翔くんへ近付く。
「な、なんだよ…」
俺の勢いに気圧されたのか、若干引き攣った顔で見上げてきた。
「かちょー、ちょっとお話があるんですけど」
「なに?」
「…ここじゃあれなんで、ちょっと」
俺はむんずと腕を掴むと、引き摺るように会議室へと向かった。
「ちょっ…大野っ…」
フロア中の視線を感じたけど、そんなの構うもんか!
会議室に突き飛ばすように押し込んで。
鍵を、閉めた。
「なんだよっ!仕事中だぞっ…」
目を吊り上げた翔くんの手首を掴んで、思いっきり壁に押し付ける。
「痛っ…」
一瞬怯んだ隙に、全体重をかけて掛けて壁に抑えつけた。
逃げられないように。
「なっ…なにっ…」
途端、不安げに揺れる、つぶらな瞳。
…そんな顔、前はしなかった。
仕事中に隙を見せるようなこと、絶対しなかったのに…
「…なに、してたの?」
腹の中から絞り出した声は、自分でもびっくりするほど、低い。
「な、なにが…?」
「松潤と。なにしてたんだよ?」
「べ、別に、なにも…」
なんて言いながら、ビミョーに視線を外される。
手を伸ばして。
股間を、掴んだ。
「ひゃんっ…」
聞いたこともない、可愛い声を上げた。
「…何?今の」
「な、なにって、智くんがいきなり掴むからっ…」
「いきなり掴んだら、そんな可愛い声、出すんだ?」
「さ、智、くん…?」
こんなの、俺が知ってる翔くんじゃない…
「智くん…」
翔くんの手が、そっと頬に触れたとき。
「課長!電話です!」
ドアを激しく叩く音と、松潤の声が聞こえた。