第4章 夢
【和也side】
「帰りましょ?課長」
グサグサと突き刺さる視線を背中に感じながら、翔さんのデスクへと向かった。
「え?あ、も、もう?」
「ええ」
「あ、うん…」
チラチラと、翔さんが俺の後ろに視線を送る。
あの3人のこと、気にしてるんだろう。
なんだよ。
今は俺のターンなのにさ…
「行きますよ」
デスクの向こう側まで回って、無理やり腕を掴み、立ち上がらせる。
「ちょ、ちょっと、わかったからっ…」
ズカズカと大股で歩く俺と、引き摺られるように歩く翔さんの姿を、フロア中の人が見つめていた。
「…頼むから、会社ではいつも通りにしてくれよ…」
昨日は家に帰っていきなり襲っちゃったから警戒されてんのか、夕飯は食べて帰ろうと翔さんが言い出して。
翔さんちの近くの居酒屋に入り、ビールを一口飲んだところで、大きなため息と共に吐き出された言葉。
俺は、ちょっとムッとした。
「なんで?」
「なんでって…」
「…あの3人に、遠慮してるの?」
「そうじゃなくて…他の社員に変に思われるだろ?」
「…わかった。気を付けます」
別に困らせたいわけじゃないから、そのことについては素直に頭を下げる。
「…嫌なわけじゃ、ないから…」
視線を落とした俺に、翔さんはぽそりとそう言った。
あれ?
もしかして俺が落ち込んだと思った?
顔を伏せたまま目線だけを上げると、困ったような顔でこっちを見てる。
やっべぇ、めちゃくちゃ可愛い…
「わかってます。じゃなきゃ、初めて、俺にくれないですもんね?」
もっと見ていたい気もするけど。
やっぱり困らせたいわけじゃないから。
顔を上げてニコリと微笑むと、急に顔を赤くして目を逸らした。
「…なぁ、聞いてもいい?」
「なにをです?」
「…どこが良いわけ?俺の」
「…え?」
なにその、私のどこが好きなの?的、乙女な発言。
そういうとこが、萌えるンですけど。
「いつも会社で見せる鬼課長もカッコいいし。でも褒める時の優しい表情も好きだし。大きな口を開けて笑うのも可愛いなぁと思うし、食べ物を口いっぱい詰め込んで本当に美味しそうに食べるとこも。それから…」
「も、もういいから!」
慌てて止めに入ったけど。
まだ、肝心なとこ言ってないよ?
「俺に抱かれて、蕩けそうな翔さん、すっごく可愛くて益々好きになりました」