第3章 Amore
【潤side】
「あの2人、どうしてっかな~今ごろ…」
テーブルの上に顎を乗せて。
本物のおじいちゃんみたいに背中を丸めて、大野さんがぽつりと呟いた。
「さぁ…ホテルにでも連れ込んで、さっそくヤッてんじゃない?」
ニノが横目でチラリとそれを見て、素っ気なく言い切る。
「え!?もうっ!?早くない!?だって、別れてまだそんなに経ってないよ!?」
「だから、知らないって!ずっとあんたと一緒にいるのに、知るわけないでしょ!」
「なんだよ~」
ガバッと起き上がってニノに詰め寄った大野さんは、またふにゃっと脱力して、テーブルに突っ伏した。
「ううう…翔くんは、俺んだったのに~」
「違うだろ」
「何言ってんの、バカじゃない?」
ふざけたこと言うから、俺とニノで同時に頭をはたいてやった。
「痛って!」
わざとらしく頭を抑えた大野さんを横目で見ながら、ついつい深いため息が漏れてしまった。
2人とも、それっきり無口になる。
そりゃあ、そうだろ。
大好きな人がさ、自分じゃない人と一緒にいるってわかってんだから…。
モヤモヤすんのは当たり前だ。
「…どうする?これから」
「どうするってもねぇ…」
「帰る?」
「う~ん…」
聞いても、ニノが曖昧に答えるだけで。
大野さんなんか、返事もしない。
「…じゃあ、よかったら俺んち来る?こっから電車で20分くらいだけど」
「行くっ!!」
提案すると、弾かれたように大野さんは起き上がった。
「ま、このままここにいるわけにもいかないしね」
ニノは渋々って感じに言ったけど、誰よりも早く立ち上がっちゃって。
なんだ、みんな寂しいんじゃん。
そう感じて、ついつい笑いが漏れてしまう。
「…何笑ってんのよ、潤くん」
「いや、別に」
「よし、行こう!早く行こう!」
「大野さん、張り切り過ぎ」
さっさと会計を済ませて、足早に店を出た。
「途中、酒とつまみ買ってくか~?」
「いいねぇ。朝まで飲み明かそうぜ!」
「え?朝までなの?」
「だってこんな時間から飲むんだから、朝までだろ。なぁ、ニノ?」
「俺、タクシーで帰るの嫌ですよ。深夜料金、高いもん」
「マジかよ…」
「誘ったのは潤くんでしょ?文句は言わせません」
小柄な2人に両側から拉致されるようにして、駅へと向かう。
でも、なんだか楽しいかも。