第2章 unknown
【潤side】
「ちょっと!」
騒ぎ立てる俺たちを遮るように、櫻井さんの大きな声が響いた。
一斉に櫻井さんの方を見ると、怯えたようにビクリと震える。
「お、おまえらっ…いいかげんにしろよっ…!勝手に4人で話を進めてさぁ、俺の気持ちは置き去りかよっ…」
いつものあの人らしくない、若干しどろもどろな感じでそう言うから。
「じゃあ、櫻井さんの気持ちはどうなんですか?本当に大野さんのこと、好きなんですか?俺たちのことは、どう思ってるんですか?」
「そ、それはっ…」
畳み掛けたら、目を白黒させて口籠もってしまった。
お?
なんか、戸惑ってる?
正直さ、ニノが言い出したときはビビったよ。
なに言い出すんだよって。
だって…
俺ら、セックスしてんの、大野さんだけじゃないし。
うっかりそんなことバラしちゃって、課長がドン引きしちゃったらどうすんだ!?って思ったんだけど。
なんか、上手い具合に大野さんだけが節操ない感じに話が進んでる。
さすが、ニノ。
その辺は抜かりねぇな。
大野さんと付き合うって言い出したときには、すっげぇショックで目の前真っ暗になったけど。
これなら、話の持って行き方次第では、ひっくり返せるかも。
さぁて、どうすっかな~。
「ど、どうって…そんなの、考えたこと、ないしっ…」
「じゃあ、考えてください。ちゃんと。俺、本当に櫻井さんのことが好きなんです」
「え、えっ…」
「俺もっ!誰よりも櫻井さんが大好きっ!」
相葉くんも、今しかないと思ってんのか、グイグイ押してくる。
「私も…こんなに好きになった人、今までいません」
もちろんニノだって、このチャンスを逃すはずがない。
「翔くん…俺、翔くんがいないと生きていけないよぉ…」
大野さんなんか、涙まで見せちゃってさ。
櫻井さんは、何度も何度も俺たちの顔を見比べて。
やがて混乱した表情のまま、押し黙ってしまった。
重苦しい沈黙が、落ちる。
俺はこっそり隣に座るニノを見た。
こういうときは、こいつが一番頼りになるからな。
ニノは俺の視線に気付くと、ニヤリと口の端を持ち上げて。
「じゃあ、こうしませんか?」
やたら神妙な表情で、切り出した。
「俺たち4人と、お試しで1週間ずつ付き合ってください。で、1ヶ月後、結論を出してもらう。いかがです?」