第1章 Kissからはじめよう
【翔side】
全く。
俺が気付いてないと思ってんのかな?
お前がそうやってピンクのため息つきながら、俺のことをハートの目で見てること。
言っとくけど、俺男だよ?
まあ、言わなくても分かってるか...
彼のことは嫌いじゃない。
いや、好きか嫌いかで言ったら、好きだ。
でも、それは気の合う同期として、であって、お前の好きとは毛色が違うんだよ...
申し訳ないけどね。
好き好きオーラ振りまいて俺にすり寄ってくる智くん。
分かってるなら、その気持ちに応えられないのなら、突き放せばいい。
飲みの誘いにも乗らなきゃいい。
分かってはいるけど...どうしてだろう?
俺がそうしないのは...
自分でも分からないよ。
『翔くん』そう笑う彼のこと、俺はホントはどうしたいんだろうか?
仕事を終わらせ、いつもの居酒屋に行くと、智くんは奥の席から、俺を見て盛大に手を振った。
ったく///
その仕草を、可愛いと思ってしまう自分が、もう恐怖でしかない...
大丈夫かな?俺...
「もう飲んでるの~?」
「うん、だって、いつ来るか分かんないんだもん」
「分かんないって...何で課長が残業してるのに、部下のお前が先に飲んでるんだよ?」
笑いながら生を注文した俺は、彼の首筋にある赤い痕に気付いた。
「智くん、そこ、何~?」
「えっ?何?どこ~?」
「ほら、首のとこ、赤くなってる...」
「なんだろ~?...あ、翔くん、キスマークだと思っちゃった~?」
「ばっ///」
「気になるんだ❤」
探る様な目で、俺を覗き込むから、俺もむきになって、
「別に~。智くんに彼女がいても俺は構わないけどね~」
「俺んち、来て見る~?」
「えっ??」
「疑うんなら、俺んち、来て見ればいいじゃん。女の子が来てるかどうか見ればわかるでしょ?」
....見れば、ってさ。
悪戯っ子みたいな彼の目を睨みながら、俺はビールを煽った。
なんか、こいつの毒気にやられそうだよ。
それから、いつものように他愛もないことを話しながら酒を飲んだ。
金曜日だったから、いつもより飲んじゃった。
会計を済ませていると、智くんが、
「ねえ、翔くん、この後ホントに俺んち、来ない?明日休みだしさ」
...なんか、企んでるのか?
俺はじっと彼の顔を見た。
まあ、いざとなったら、逃げればいいのか...