第1章 Kissからはじめよう
【智side】
はぁぁ…
いつ見ても、カッコいいなぁ…❤
俺はデスクの上に両肘をついて顎を両手で支えながら、ディスプレイの向こうに見える超絶カッコいいイケメン課長を眺めていた。
パソコンをじーっと見てるくっきり二重のアーモンドみたいな瞳。
いつもリップを欠かさない艶々の紅いぽってりとした唇。
…キス、したい。
あのぷるんぷるんの唇に触れたら、どんな感じなんだろ…
きっと温かくて柔らかいよね…
ああ…キスしたいな…
「大野!」
頭ん中であの唇の触り心地を妄想してると、いきなりおっきな怒鳴り声が飛んできた。
「ふぁ~い、なんですか~?かちょー」
「サボってないで仕事しろ!それから、その気の抜ける返事、やめろ!」
「ふぁ~い」
「だからっ…」
ぎゅっと眉間にしわが寄ったのを見て、俺は慌てて姿勢を正した。
いかんいかん。
これ以上怒らせたら、後が大変だ。
怒ってる顔もイケメンだから、ほんとはもっと見ていたいんだけどね。
俺は真面目に仕事してる振りをして、またちらりと彼の姿を盗み見た。
今度は、松潤となにやら顔をつきあわせて話をしていた。
さっきから俺が熱い視線を送ってる彼は、俺が所属するアプリケーション開発一課の若き課長、櫻井翔。
俺とは同期なんだけど、元々の頭の出来が段違いで。
あっという間に同期の誰よりも先に出世しちゃって、この春から俺のいる課の課長になった。
実は俺、入社式で翔くんに一目惚れしたんだ。
だってさ~、あのかっこよさだよ~?
惚れない方がおかしいじゃん!?
で、人見知りの俺が勇気を振り絞って話しかけて。
話してみたら、もうすぐに意気投合して。
配属先は違ったけど、ずーっと1ヶ月に何度かは飲みに行って親交を深めてきた。
で、ついに同じ部署で働くことになってさ。
辞令が出たときは、小躍りして喜んだね!
だけど……
適当に仕事を片付けながらチラチラ見てると、ようやく松潤が翔くんの傍を離れて。
俺はすぐさま携帯を取り出すと、翔くんへLINEを送った。
『今晩、飲みに行かない?』
すぐに翔くんが携帯を確認して。
俺をジロリと横目で睨んだ。
仕事中だって言いたいんでしょ?
でも、そんなの気にしないもんね~♪
俺がにこっと笑うと大きなため息を落として。
すぐに返事がきた。
『いいよ。いつものとこで』