第2章 unknown
【翔side】
かなり強引に潤に誘われ、飲みに行くことになった。
実は夕べ、持ち帰った資料の直しやチャックをしていて、3時間しか寝てないから。
今日は早めに帰って、ゆっくり寝ようと思ってたんだけど...
まあ、そこそこで切りあげて、先に帰ればいいかな。
今夜の飲みの席で、何が起きるかなんて知る由もない俺は、気楽に...警戒も全くなく、そんなふうに思っていたんだ。
「かっちょ~!行きましょ~!!」
相葉が俺を呼んだ。
ったく///そんなデカい声で呼ぶ必要がどこにあるんだよ///
デリカシーのない大声で、フロアの何人もが一斉に俺たちに注目した。
「声がでかいよ...まだ仕事してるやつらもいるんだから...」
小声で相葉をたしなめると、相葉はぺろりと舌を出して見せた。
こいつのこんなところが憎めない。
失敗してもこれで許されてしまうところが多々あって...俺も、ついつい『今度は気を付けろよ』なんてさ。
許しちゃうんだけどね...
「ほら、行くぞ!」
俺達がフロアを出ようとすると、女の子が声を掛けて来た。
「お疲れ様です!課長、どこ行くんですか?」
「あ~、飲みにね...」
「いいですね~♪一緒に..」
すると間に入るように相葉が、
「今日はダメなんだ~!悪いね」
とあっさり断った。
「いいのか?お前と飲みたかったんじゃ..」
「いいんです!行きましょ!」
相葉は俺の腕を取ってずんずん歩き出した。
フロアを出ようとすると、トイレから帰って来たのか智くんが戻ってきた。
「あれ~?もう行くの?待っててよ。俺も今片付けてくるから♪」
「大野さん、片付けなくても、デスクの上綺麗になってましたけど...」
相葉にチクリと言われたけど、智くんは気にしてないのか、分かってないのか、ふにゃんと笑って、
「あ、マジで~?じゃ、このまま行っちゃおっかな♪」
そう笑って俺達についてきた。
全く...
仕事してないみたいに綺麗だった、って。
嫌味言われてんのに...
俺は違うタイプの天然ふたりに両脇から挟まれて、夜の街に繰り出した。
「ここです!ここ!個室予約してあるんで♪」
「個室?個室の必要あったか~?」
「今日は、ちょっと...」
何やら意味ありげな相葉の後について個室に入ると、もう既に二宮が来ていて、俺達を見ると軽く手を挙げた。