第2章 unknown
【潤side】
ったく、ニノの奴~
なんだってんだよ!
大野さんと櫻井課長がなんだってんだよ!
課長が大野さんと、なんてあるわけないじゃん!
そりゃあさ~、ここ一番って時の集中力はスゴいけど。
普段はおじいちゃんみたいにボケッとしてるし。
課長にしょっちゅう怒られてるし。
確かに同期で、よく飲みに行ったりしてるみたいだけど。
俺だって、課長と飲みに行くなら負けねぇし!
仕事だってさ…
「松本、ちょっと」
デスクから、課長が手招きした。
「はい」
「これなんだけどさ…」
ほら。
大野さんより、俺のこと頼ってくれる。
この間飲んでるとき、言われたんだ。
おまえが一番俯瞰的に物事を考えられるから頼りにしてるって。
ふふん、大野さんなんて、俯瞰的って意味もわかんねぇよな~。
「じゃあこのまま進めてくれ」
「はい」
社内の女の子らが、俺らが2人でいるとキャーキャー言ってんの、課長知ってんのかな?
課長が結婚とかして欲しくない女子社員なんてさ、いっそ俺と付き合ってたらいいのに!なんて言ってるんだぜ~?
…まぁ、遠くない将来、そうなるんだけどね。
このままちょっとずつ距離を近付けていって。
いつか絶対、俺のものにしてやる!
でも、なかなか手強いライバルがいるんだよなぁ。
俺は課長の傍を離れて自分のデスクへと戻る途中、チラリと視線を流した。
大野さんと相葉くんは、まぁライバルって程でもない。
2人とも課長のことが好きで堪んないみたいだけど、余りに露骨にラブラブ光線を送ってるもんだから、思いっきり課長に警戒されてるし。
それでも、大野さんは同期だからガードはちょっと低いけど、相葉くんなんてもう勝負になんないでしょ。
問題は、こいつ。
「なに?」
ニノが俺の視線に気付いて、じろりと睨んできた。
「いや、なんでもない」
不気味すぎる。
ニノも絶対課長のことが好きな筈なんだ。
でも、キレイに隠してる。
なに考えてんだか、全然わかんない。
しかも、仕事も出来るから、課長も可愛がってるし。
俺にとっては一番の驚異。
目の上のたんこぶ。
どうやって、ニノを出し抜くかな…。
そんなことを考えながら仕事してる間に時は過ぎ、終業のチャイムがなった。
「かっちょ~!行きましょ~!!」
相葉くんの大声が、フロアに響き渡った。