第2章 unknown
【和也side】
あやしい…
奇妙な違和感を感じた俺は、その後仕事を続ける振りをして、あの2人を観察した。
そうしたら、明らかに昨日までと違う空気感。
大野さんは仕事する振りすら忘れて、ずーっと蕩けるような顔で櫻井さんを見てるし。
櫻井さんは不自然に大野さんから顔を背けながら、一切そっちを見ようとはしない。
明らかに、あのピンク色のラブラブ光線に気付いてるはずなのに。
だってさ、周りにいる奴、みんな気付いてるよ?
いくら櫻井さんが救いようのないほどの鈍さだとしても、気付かないはずがない。
「ね、潤くん」
俺は、隣のデスクに座る同期の潤くんの肩を掴んだ。
「ん?どうした?」
「あの2人、変じゃない?」
「あの2人って?」
「大野さんと櫻井課長」
「えっ!?」
それまでパソコンの画面から目を離さずに相槌を打ってた潤くんは、弾かれたように俺を見た。
「変ってなんだよ」
「ちょっと見てみなって」
指を指すと、潤くんはその目力の強い目で、睨み付けるように観察する。
「う~ん…ん?よくわかんねぇけど…」
「なんか、あったのかも」
「なんかって、なんだよ」
「例えば…大野さんが告ったとか」
「ええっ!?」
勤務時間中の静かなフロアに、潤くんのデカイ声が響いて。
櫻井さんが、ぎろりと俺たちを睨み付けた。
「松本っ!!」
「す、すみませんっ…」
雷が落ちる前に潤くんが勢いよく頭を下げると、櫻井さんはデカイため息をつく。
それから、ほんの少しだけ大野さんに視線を向けた。
えっ…?
視線の先、大野さんはふにゃんと微笑んで。
そしたら。
櫻井さんは、真っ赤になって顔を背けた。
えええ~っ!?
変!
絶対変だ!!
なんで!?
なんでそこで、真っ赤になるわけ!?
「ねぇ、潤くん…」
「だから、なんだよ!おまえのせいで課長に睨まれたじゃん!」
潤くんは今度は小声で抗議してきたけど、それどころじゃない!
「やっぱ、変だって。あの2人、なんかあったんだって!」
「だからっ…」
「ねぇ、今日の夜、課長を飲みに誘ってよ!」
「俺が~?」
「だって、潤くんが1番課長と飲みに行ってるじゃん!課長が行くって言えば、大野さんと相葉さんはついてくるだろうから…」
その場ではっきりさせなきゃ!
大野さんだけ抜け駆けするなんて、許されないよ!