第2章 unknown
【和也side】
なんだろう?
課長のことって。
まぁ、相葉さんの話だし?
たいしたことないだろうけどね。
俺は、指先で忙しなくキーボードを叩きながら、こっそりと窓際のデスクを盗み見た。
そこに座ってるのは、課長の櫻井さん。
今日もカッコいいなぁ❤
ああやって、真剣な顔でなにかを考えてる顔も超絶カッコいいけど。
時々、おっきな口を開けて笑う顔が、もう堪んなく可愛くて。
そのギャップっていうの?
気が付いたらそれにやられてて。
いつの間にか好きになっちゃってた。
男だし、上司だけど。
そんなの関係ない。
俺、狙った獲物を逃がしたことないんだ。
絶対堕としてみせる。
硬く決意しながらその姿を盗み見てると、不意に顔を上げた櫻井さんと目が合って。
「二宮、ちょっと」
手招きされた。
「なんっすか?」
本当は駆け寄りたいところをグッと堪えて、かったるそうな雰囲気を醸し出しながら櫻井さんへと近付く。
だって恥ずかしいじゃん。
ご主人に呼ばれて尻尾振る犬っころみたいでさ。
それに、俺の見立ではあの人ノーマルだし。
堕とすには、それなりの準備が要るだろうからね。
ゆっくり近付く俺を、櫻井さんがジッと見てる。
やべぇ…
見られてるってだけで、ドキドキする…
そのアーモンド型の瞳に吸い込まれそう…
「昨日のおまえの企画だけど」
俺が傍に立つと、パソコンのディスプレイをこっちに向ける。
そこには昨日俺が提出してた恋愛ゲームの企画書が写し出されてた。
「ああ、それね。どうですか?」
「うん。なかなかいいと思う」
「ありがとうございます」
よっしゃ~!!
鬼の櫻井に認めてもらえた!!
小躍りしそうな心をなんとか押し留め、平常心を装う。
これで、課長の中の俺の価値、ちょっと上がったかな~?
「これで進めてみてくれ」
「はい」
「キャラクターデザインは…大野!」
櫻井さんが大声で呼ぶと、大野さんは弾かれたように立ち上がった。
そしていつもの猫背で、ひょこひょこと歩いてくる。
「ほ~い。なに~?」
「これ、キャラ描いてみてよ」
「ほいほ~い」
……ん?
なんか、変じゃない?
いつもこんな返事すると、櫻井さん怒るのに…
今日は、なんでなんにも言わないの…?
それに…
「おっけー」
なんか…
雰囲気、昨日と違う…?