第2章 unknown
【雅紀side】
「あ、大野さん、おはようございま~す」
「おう、雅紀...おっはよ♪」
...何だろう?凄いご機嫌。語尾が弾んじゃってるし...
「なんか、いいことあったんすか~?」
駅からの道すがら、横に並んで聞いてみた。
「えっ?なんで?どうしてそんなこと言うんだよぉ~」
...やっぱり。
いい事あったんだ!
この人のいい事って...いやな予感がする。
朝っぱらから、鼻の下伸ばしてデレデレした顔してる訳を突っ込んでみようと思った。なのに、
「あ、翔くぅ~ん!おはよ~!じゃ、雅紀、またね」
大野さんは、先に歩いていた櫻井さんを見つけて追いかけて行ってしまった。
...なんだ、あれ?
いつも朝は、半分寝てるみたいにぼんやりしてる人が、あの嬉しそうな顔...
俺は頭の中に浮かんだ仮説を、頭を振って追い出そうとした。すると、
「朝から、何意味不明な行動してんですか?」
後ろから声を掛けて来たのは、ニノだった。
「あ、ニノ!見てたんだ...」
「見てたって、朝からおかしなことやってる人がいるな~って、笑ってたんですよ」
おかしなって...
あっ!!そうだ。こいつに話してみよう。だってこいつも...
「なあ、大野さんの様子がおかしいんだよ!」
「え~?あの人、結構いつもおかしいですけど...」
「いや、そうじゃなくって...」
話し始めたら会社に着いてしまい、運良く開いていたエレベータに急いで飛び乗ったから、それ以上は話せなかった。
「あのさ、今日終わったら飲みに行かね~?」
「え~、今日っすか~?俺、用事が...」
「どうせ、ゲームだろ!凄い大事な話なんだよ...櫻井さんの事...」
その名前を出すと、ニノはパッと顔を変えた。
「課長?課長がどうかしたんですか?」
ほらね。凄い食い付きよう...
「ここでは、ちょっと...夜話すよ...」
「...分かりました..じゃ、その時に」
ニノは俺と離れて席に向かいながら、チラッと櫻井さんを見た。
そこには、いつと変わらず、ダークグレーのスーツをビシッと着こなした、スーパーイケメンの課長がデスクの書類を整理していた。
そう...
俺が思いを寄せるその人...櫻井翔。
彼を取り巻く環境は、俺にとっては気が抜けない、極めて厳しい状況なんだ。
だってさ...
ライバルが...