第7章 まだ見ぬ世界へ
【翔side】
『モラルに縛られるな』
『みんなが幸せになる道がある』
………そんなこと…
みんなが俺を見つめる。
俺の言葉を待っているんだ。
……そんなこと、考えたこともなかった。
一人に決めることができないから、
答えが出せないから、
誰とも付き合えないって。
夕べ、俺が寝ないで導き出した答え。
それをあっさりとひっくり返されて、正直今、頭の中は真っ白で…
「…翔さん、仲良くやりましょう」
ニノはニッコリ笑った。
「きっとワイワイ楽しいかも♪」
雅紀も目を細めて俺を見ている。
「翔くん…一緒に幸せになろう❤」
智くんが大きく頷いた。
「さあ、翔さん!!」
潤が出した手に、他の3人が手を重ね、俺をじっと見つめた。
……重ねられた4人の手…あの上に手を重ねれば、動き出す。俺の新しい毎日が…
「…えっと…」
言葉を探す俺を、心配そうにみんなが見ている。
「今まで…ホントにありがとう…」
4人が一斉に息を飲む。
でも、誰かが何か言いだすより、一瞬だけ早く俺は口を開いた。
「そして、これからもよろしく!」
言いながら一番上の手を乗せると、4人の顔が一斉に輝いた。
「翔さん!!」
「やった!!」
「翔くん❤」
「翔さん!」
みんなが一斉に抱きついて来るから、俺は真ん中でバランスを崩し、みんな一緒に束になって転んだ。
食器がいくつかテーブルから落ちて派手な音を立てた。
「大丈夫ですぁ!?」
店員が、慌てておしぼりを何本か持って戸を開けた。
「あ、すみません…ちょっと盛り上がっちゃって…」
「こっちで片付けますから」
不安そうな顔をしながら店員は帰って行った。
「やべっ、ここ店だった…」
「全くお前ら~!」
割れた食器を片付けながらも、みんなは笑顔で。
「場所、変えますか?」
「翔さん家、行きます?」
えっ??俺ん家?みんなで?
「ダメですか~?」
「ダメっていうか…そんな、いきなり…あの…」
言い淀む俺に、智くんが、
「心配しなくても、いきなり最初っから4人の相手しろなんて言わないから♪」
と笑った。
ただ飲むだけだって。
ホントかな~??まあそれはそれで少し寂しい気も…
あ、いや、そうじゃなくて!
会計を済ませた俺たち5人は、下らない話をしながら俺の家に向かった。
……なんだか、幸せだった。