第6章 Hung up on
【雅紀side】
「このまま帰る?」
今度出す新作の打ち合わせが終わり、
松潤が声を掛けてきた。
「うん…一応、直帰とは書いてきたけど…松潤はどうするの?」
一緒の会議に出ていた他の連中は、さっさと帰ってしまったらしく、気がついたら二人だった。
「何か飯でも食ってく~?」
「あ~、そうすっか~」
俺と松潤は、駅の方に向かって、
肩を並べて歩き出した。
「…今頃、どうしてるのかなぁ~…」
ため息混じりに松潤が言った。
「…誰が?」
分かっていたけど、敢えて聞いてみた。
「…いや…やっぱいいや」
「課長と大野さんのこと?」
「分かってるなら聞くなよ~…」
そう笑った松潤は、直ぐに押し黙った。
……あのふたりか……
「あっ!」
急に止まるから、ぶつかりそうになった。
「何だよ~、急に…」
「あれ…」
松潤が指差す先には、まさに渦中のふたりが仲良く歩いているのが見えた。
「どこへ行くのかな~」
俺たちは、一定の距離を保ったまま、二人の後を着いていった。
少し歩くと、居酒屋に入っていくのが見えた。
俺と松潤は、顔を見合わせたけど、当然のようにふたりが入った居酒屋に入った。
『いらっしゃいませぇ~!』
…通された席は、少し離れているけど、翔さんの斜め後ろの方にある席。
座ると同時に、おしぼりで手を拭く大野さんが、俺たちに気がついた。
一瞬、あっ、という顔をしたけど、直ぐに目を反らせた。
…ちくしょー///シカトかよ(-_-;)
声を描けてきたら、合流して、一緒に飲めるかも…位に思っていたのに、考えが甘かった。
大野さんは、ああ見えて以外に強かだったりするんだ。
「…なんか、いい雰囲気じゃね?」
俺がそう言うと、
「そうかなぁ?ただ大野さんがベタベタしてるようにしか見えないけど…」
松潤は悔しそうにそう言った。
ただ見ている訳にもいかないので、
俺たちもビールと摘まみを頼んで飲み始めた。
『振り向け!振り返れ!』
そう念じても、翔さんは前を見たまま…
そんなに大野さんを見つめるなよ!
「はい、翔くん…あ~ん❤」
「いいって…」
「ほら、早く~❤」
ハートを無駄に散りばめる大野さん…
すると、それを横目で見ていた松潤が、徐に立ち上がった。
えっ!?
我慢の限界を越えた彼は、ついに二人に声を掛けた。