第6章 Hung up on
【雅紀side】
仕事終わり、デスクを片付けていると、ニノが声を掛けてきた。
「相葉さん、飯でも食ってきませんか~?」
珍しいこともあるもんだと、彼の顔をじっと見ていると、
「行くんですか?行かないんですか?あ、ちなみに相葉さんの奢りですけど」
と言った。
「何で俺の奢りなんだよ~?大体俺、行くって言ってないしさ…」
「ほら、行きますよ!」
何だよ~?こいつ、俺のことなんだと思ってるんだ…
「あ!ちょっと待って///」
俺はニノの後を追ってオフィスを出た。
ちらっと見た櫻井課長のデスクは、もうすっかり綺麗に片付けられていた。
その10分後、俺達は会社の近くの居酒屋で向かい合っていた。
ビールが運ばれて、軽く乾杯しようと思った俺を無視して、ニノは一気にジョッキを煽り、半分近くまで飲み干した。
珍しいいな…こんな飲み方。最初っから飛ばしてるし。
なんかむしゃくしゃすることでもあったのかな?
「はあぁ~…」
「なんだよ、そんな大きなため息ついて…なんか、やなことでも…」
「聞いてびっくりしないでくださいよ!」
俺が言い終わるより早く、俺のネクタイを引き寄せて、顔を近付けて来た。
至近距離で見るニノの顔…
こいつ、こんな綺麗な顔してたっけ~?
肌もツルツルで、女の子みたいな…
「ねえ、聞いてますか?」
「あっ、う、うん…何だよ?びっくりすることって…」
するとニノは、目を三角にして、
「夕べ、翔さん、大野さんに抱かれたんです!」
…何でそんなこと…?
「本人が…大野さんが言ってたんですけどね。あの人、大野さんに『イレて』ってお強請りした挙句、『智くんが好きだ』って!そう言ったんですよ!!好きだって!!」
嘘だろ~?そんなの信じられないよ~
あの課長が?大野さんに?
「す、す、すっ…」
「もう~///ちゃんと喋ってください!大野さんの事、甘く見てると持ってかれちゃいますよ~?あんな惚けた顔してるくせに、その辺抜かりないんだから、あのおじさん!」
そう膨れたニノ…そんな顔も可愛いけど…
そんなこと言ってる場合じゃない///
翔さんが『イレて』だって~?
そんな言葉…
そんなの、自分の耳で聞くまでは信じらんないよ。
それがホントなら…
なんて羨ましいんだよ///
「その話、詳しく教えろよ」
俺はニノに詰め寄った。