第6章 Hung up on
【和也side】
昼休み。
弁当を買ってフロアに戻ると、大野さんが自分のデスクでぼんやりとしていた。
まぁ、いつもぼんやりしている人だから?
俺も大して気にもせずに、弁当を突いてたんだけど。
それにしたって様子が変だから、食べる手を止め、大野さんへと近付いた。
「なに惚けてんのよ?」
後ろから覗き込むと、画面に映し出された女の子のキャラの服の色を意味もなく塗り替えてる。
「こら、無視すんな」
返事もしないから頭を叩くと、心底びっくりした顔で振り向いた。
「ふぇっ!?ニノ!?」
「ふぇっ、じゃないよ。なにボケッとしてんの?また課長に怒られるよ?」
「あ~、うん…」
「飯、食べないの?」
「う~ん…」
なにを聞いても、気のない返事ばっかりで。
さすがに、ちょっとおかしいな…
俺は仕方なく話を聞くために、隣の椅子へ腰掛けた。
「昨日の晩、翔さんと一緒だったんでしょ?なに?翔さんに下手くそとでも言われた?」
冗談半分に聞いてみたのに、大野さんは大きくため息を吐くだけ。
ええ~っ!?
まさかホントに下手って言われたのかな!?
別に…そんなにヘタじゃない、と思うけど…
あ、わかった!
舞い上がりすぎて、変態チックなことさせたんだろ!
おもちゃ突っ込むとかさ!
ナース服着せるとか!
「いきなりそんなことするか」
「じゃあなにさ?やっときた順番なのに、なんでそんな暗い顔してるわけ?」
顔を覗き込むと、また深いため息を吐く。
「なんか…翔くん、変わっちゃったな、ってさ…」
「はぁ!?」
「可愛いし可愛いし、めちゃめちゃ可愛いけど…」
「あんた、可愛いしか言ってないから」
「…俺のせい、なんだって。あの時、俺と寝たりしなきゃ、こんな翔くんになんなかったって…」
「え…?」
大野さん…
もしかして…後悔、してるの…?
嫌な汗が、流れ落ちた。
だけど。
「あんな…可愛いくって…エロくって…甘えた声でさぁ、入れて、だってぇ!しかもさ!智くんが好きだよって、言ってくれたんだよぉっ!」
いきなり、デレた顔でそんなこと言い出した。
…惚気かよっ!!
「ふざけんなっ!!」
俺は思いっきり頭を叩くと、足音を鳴らして自分のデスクへと戻る。
あ~くそっ!
心配して損したわ!!
「ニノ~?なに怒ってんの~?」
「うるさいっ!エロ親父っ!」