第1章 目覚め
しばらく進んだ先にあったのは暗闇に浮かび上がった巨大な両開きのドア。頑丈そうなそのドアは、何かを拒むようにたたずんでいるが、ダンブルドアが何かを唱えると、重く開いた。
そのドアの先は暗い。それこそスネイプが授業で使っているような地下牢のようである。しかし、地下牢とは違う点が何点かある。一つは部屋の壁に一定の間隔でランプが灯されていること。
二つはスネイプの背よりも高い、大きな窓があること。だが、その窓もワインレッドのカーテンに覆われ、陽は差さず、景色は分からないままである。
三つは……決して狭くはないこの部屋の窓の目の前に存在感を放ち鎮座するダブルベッド。そこには、人影があった。
「……あれは」
「あれが、『ホグワーツの守り人』じゃ」
スネイプの視線の先は、ダブルベッドに横たわる黒髪の少女。
遠目から、しかも薄暗い中でもわかるほど華奢で、儚い。
その少女が『ホグワーツの守り人』だなどとはにわかに信じられないだろう。
「冗談は遠慮願いたいものですな」
スネイプも例外なく、少女が『ホグワーツの守り人』だとは信じなかった。
「そうであれば、どれだけ良いか」
スネイプの言葉に、ダンブルドアは少し哀しそうに目を伏せ、ダブルベッドに近づく。
近付けば近付くほど、明らかになる少女の容貌。
濡羽色の髪は少女の腰ほどまであり、掛け布団と髪の間から見える肌は恐ろしく白く、腕などは細い。
目はしっかりと閉じられ、ぴくりとも動かない。まるで呼吸もしていないのではないかと錯覚するほど、少女は人工的だった。
見れば見るほどこの少女が『ホグワーツの守り人』だとは思えない。しかし、ホグワーツの東塔、最上階に厳重に隠され、眠りについている人形のような少女。その異質さは認めざるを得なかった。
スネイプがその異質さに戸惑っていると、ダンブルドアはそれを知らずに語り始めた。