第1章 目覚め
ここはホグワーツ魔法魔術学校。
いわゆる魔法使い・魔女と呼ばれる少年少女が己の力を磨き、制御する術を身に着ける学び舎。
紀元前から続くこの学び舎には謎が多く、その真偽を知るものは少ない。
その謎のひとつが、ホグワーツの東塔、最上階の一室に眠っていることも、知る者は歴代のホグワーツの校長のみ。
つまり、その謎の真実を知るのは、現ホグワーツ校長、アルバス・ダンブルドアただ一人である。
そのダンブルドアが、最も信頼する部下セブルス・スネイプを連れて東塔の最上階にいた。
「校長。何故このような場所に我輩を連れてきたのです」
「セブルス、そう急ぐでない。次期に分かることじゃ」
訳も分からず連れてこられ、苛立ちを隠さないスネイプに、ダンブルドアはそう言って、退屈そうなアジア系美女が描かれた大きな肖像画の目の前に立った。
肖像画の中の美女は二人を頭の端からつま先までじっくり眺めてから鼻で笑い、口を開いた。
「校長以外は入れぬが。忘れたか、現校長」
「おぉ、リー。忘れてなどおらぬよ。だが、彼はあの子を知っておく必要があるのじゃ」
「ふん、知らぬわ。どうせあの子は使われる身じゃ。お前らのいいようにな」
リーと呼ばれた美女はダンブルドアとスネイプを忌々しそうに睨み付け、言葉を投げつけた。
「合言葉は」
「ホトトギス」
ダンブルドアが答えると、リーはつまらなそうに舌打ちした後、肖像画が動き、通路が見えた。
今まで黙っていたスネイプがダンブルドアに尋ねる。
「何ですかな。あのいけ好かない肖像画と『あの子』とやらは」
ダンブルドアはスネイプの問いに、答えず、先の見えないほど長い通路を迷いなく進んでいく。
「ホグワーツには、数多の謎があることは知っておるの」
「えぇ。聞くものすべて作り話のようですがな」
「その謎のひとつにある『ホグワーツの守り人』は数少ない真実じゃ」
スネイプは最も作り話だと思っていた謎を聞かれ、眉間の皺を深めた。そして、ダンブルドアの言いたいことを理解した。
「……その『ホグワーツの守り人』が存在すると?」
「そのとおりじゃ。セブルス」
ダンブルドアは珍しく真剣な面持ちで頷いた。