第29章 それぞれ
「やっと2人になれた…。」
鉄朗は小さくそう言い、わたしにおもいきり抱きついた。私もそれに応えるように、強く抱きしめると、耳元で囁かれた。
「あー、いい匂いする。この匂い大好き。」
私も鉄朗の匂い大好きだよ。
でも、それを言うより先に、耳に息を吹きかけられて、それを言えず、思わず肩をピクリとビクつかせる。
そレに気づいた鉄朗は私に言った。
「今、肩ピクってした。」
そういいクスクスとわらうと、次は耳を舐められたり、甘噛みされたり。
「…鉄朗、木葉さんたち、…いるから……っ」
「ん、それが?」
それが、と言われてしまったら、それ以上に返す言葉などない。
私が返答に困っていると、続けて鉄朗が言った。
「それよりさ、俺に会えて嬉しい?」
嬉しいに決まっている。私は先ほどと同じく返事をしようとするけど、鉄朗が服の中に手を入れるものだから、返事は出来ない。
「いやっ…」
「なに?嫌なの?悲しいなぁー」
…そっちじゃなくて…。
服の中に入っている手は、背中に周り、ブラジャーのホックを外した。その間も、もちろん耳を舐めているし、それに加えてたまに首筋を噛まれたり。
「ね、ダメだって…。」
「なんで?俺に会えて嬉しくないんでしょ?だから、嬉しくなるようにしてやんよ。」
そう言い終えると、さらに耳を舐められる。
「ちがう…、嬉しい。鉄朗に会えて嬉しいよ…。…あッ…」
「その声好き。やっと聞けた。」
このままじゃ、この空気に流されてしまう…。