第28章 1番最後。
「んー……上手にできない」
自分では頑張ってるつもりだけど、鉄朗みたく、綺麗なキスマークは出来なかった。
「お子ちゃまには難しいかァ?」
ニヤニヤとバカにしたような顔で私を見てくる。
「鉄朗は慣れてるもんねー、大人だもんねー、子供ですみませーん」
べぇー、と低レベルな仕返しをすると、大人な鉄朗は笑いながら私の頭を優しく撫でた。
「うっせ。馬鹿みたいな単純な女の扱いは慣れてるけど、綾菜みたいな難しい子の扱いは、いつまで経っても慣れねぇよ。」
鉄朗は、ふ…と、笑をなくして何を考えているのか、わからない顔で言う、
「だって、俺、頼りねぇだろ」
と。
「鉄朗も案外お子ちゃまだね。私がすっごく頼りにしてるのに気づかないなんて」
笑いながらそう言うと、つられて鉄朗も一緒に笑ってくれた。
「あぁ、そうかもな。」
こんな時間が終わるのも、あと、もう少し。