第22章 信頼
明日の部活はわたしの家から行く、と言うことで、今日は泊まっていくらしい。
「おやすみ、クロ」
私がそう言うと、クロは私のお腹に腕を回し、抱きついてきた。
すると、クロは言う。
「明日、今年最後の日だな」
「そうだね、クロはお母さんとか、お父さんの家に行くの?」
クロは一人暮らしらしいから、何も考えずに言った言葉。だから行く、とか行かない、とか言うのかなって思ってたけど、クロの答えは違った。
「オレ、自分の家ぐらいしか居場所ねぇから」
「ごめんね」
クロは辛いはずなのに、私が謝っても笑って許してくれる。
「なぁ綾菜、死なないで」
「うん…死なない。」
あの時、言えなかった『死にたい』と言う4文字。
でも、今は死にたいだなんて、まったく思っていない。
周りのみんなのおかげで、私は生きる楽しみをまた思い出した。
「クロ…話したくなかったら大丈夫…だけど私でよければ話聞いてみるよ?…その方がクロもスッキリすると、思う…から。」
するとクロは、私を握りしめる力を強めて、言った。
「いや、いいよ。眠いだろ?」
きっと、言いたいに違いない。絶対って言える何かはないけど、きっとそうに違いない。
「聞かせて、遠慮とかいらないからね」
「話させて。だけど、俺の顔ぜってぇみんなよ?恥ずいじゃん(笑)」
「見ないよ、だからクロに抱きついてるね」
私はクロの鎖骨あたりにおでこを当てると、クロのお腹に私の腕を回し、思い切り抱きついた。