第22章 信頼
いや、目が赤いだけじゃない。今も泣いてる。
クロは私がじっと見ても、気づいてないようだ。
「あ、クロ、唇から血が出てる!」
思わず叫んでしまった。
痛そう。ものすごく痛そう。
クロは私の声を聞いて、やっと私が起きていることに気づいたのか、ハッとしたように目を大きくして、私の頭を泣きながら撫でてくれた。
「ごめん、守ってやれなくてごめん。委員会のあと隣の教室だったから、待ってることも出来たのに、先に部活行ってごめん。助けに行くの遅くてごめん。」
クロはずっと謝っている。…別にクロはなんにも悪くないのに。
「もう謝らないで?クロ、聞いてくれるかな、私の話」
私がクロの顔を見て言うと、クロは声を出すわけでも、頷くわけでもなく、ただ私の目を除くように見てくれた。
「あのね、なんかもう、どうでもいいんだよね。今回みたいなことは、今日が初めてじゃなくて、…だから、大丈夫って分かっててもまたされちゃうのかなって思ってるの。また、人間以下の扱いをされて、クロを泣かせたくない。…だからさ、わたし、……ごめん…ごめんね」
泣きながら嘘一つない言葉をクロに伝える。
だけど、最後に言いたかった『死にたい』と言うたった4文字は言えなかった。…これは、私が弱いからだろう。
だけど、クロにはちゃんと伝わったみたいで。
「ごめん、俺のせいだよな、そんな気持ちにさせたの。オレがもっと早く助けてれば、もう少し軽くて済んだかもしれないのに…。」
ダメだ、今は私よりもクロを先に助けてあげないと。
私ができることは、クロを助けることだけだから。
私もたくさんクロに助けられた。だから、次は私の番だよね。
…それに、これが最後かもしれないもんね。