第21章 思いを込めて。
クロと帰る約束するの忘れちゃった…。
なんて、少ししょぼんとしながら校門を出ると、後ろから名前を呼ばれた。
この声はクロだ。
クロに名前を呼ばれたことが嬉しくて、すぐに後ろを振り向いた。
「おつかれ」
「おつかれ様」
お互いにそう言い、ゆっくりと歩いていると、私の手とクロの手が一瞬だけ触れ合った。
だけどクロはその一瞬を見逃さず、私の手を握った。
私はそれに驚いてしまい、思わずクロの顔を覗いた。
「なに?」
「なんでもない。…ちょっとびっくりしただけ」
会話をしたくないわけじゃないけど、何故か今日は会話が続かない…。
なにか、話題が…。
「あ、…あの、わたし最近ちゃんと笑えるようになったかな?」
こんなこと聞いて迷惑?…困ってたり…そう思いクロの顔を見ると、優しく微笑んでいた。
…迷惑では無さそうだ、良かった。
「たまにぎこちなかったりするけど、前よりは笑えるようになったよな。まー、ぎこちない所が可愛かったりするんだけど」
「な、…なにそれ」
「なんでしょう?(笑)まぁ、そんな気にすることでもないと思うけどネ。突然どうしたの?誰かに言われた?」
また、クロはそうだ。
すぐ私のことを心配する。
「誰にも言われてない。…こんなこと言うのは恥ずかしいんだけど、クロのために、笑顔の練習してたから……どうかなって」
ひ、引かれた?
大丈夫だよ、ね?
「なにそれ、可愛すぎだろ」
良かった。平気そうだ。