第16章 ほっぺとくちびる
「綾菜、今ヒマ?」
「はい。ものすごくヒマです。」
本当は勉強をしなければならないのだけど、クロと話ができるならこんなウソなんていくらでもつける。
…だけどクロにはバレているようで…
「嘘つき。嘘ついてまで俺と話してたいの?
…あ、今からお前ん家行ってもいい?」
「はい。誰もいませんし。
好きな時に来てください」
「ん、じゃあ今から支度していくな」
プツリ、電話が切れると一気に静かになる部屋。
そんな部屋を見渡すと布団はぐちゃぐちゃでカーテンは中途半端に開いていて…
これじゃ、まるで光太郎の部屋みたいだ。
こんな部屋じゃ、クロを呼べない。
そう思うと急いで部屋を片付けた。