第2章 水精霊の宿る石
「誰が弱っちぃって⁉︎」
ゲーラから馬鹿にされ、シドは怒り立ち上がった。
ゲーラは、そんなシドを見、フンと鼻で笑う。そして彼を指差した。
「お前は知らねェんだろうがなァ……昨日の夜、お前を気絶させたのは俺なんだよ」
「!」
「たった一発で落ちるとか、弱過ぎて話にならねェ」
「し……仕方ねェだろ!あん時は、雷に撃たれた後で弱ってたんだよ!」
「雷ィ⁉︎」
シドの言葉に皆は驚愕し、中でもケリィは思わず身を乗り出す程に驚愕した。
ゲーラも言葉を失うが、直ぐに取り戻す。再度シドを指差した。
「つくんなら、ちったぁマシな嘘吐きやがれ‼︎雷に撃たれて無事で済むわけねェ‼︎」
「あ、雷っつっても魔術の事だからな。アレだ、ヒト気絶させる時とかによく使われる、電圧高ぇけど死ぬ程じゃねえ弱い雷」
「いやいや、それにしても動けるなら大したモンだよ」
納得のいかないゲーラとは対照的に、ケリィはシドに感心している様子。
「獣人族の中でも抜きん出た強さ……才能が、シドくんにはあるんだねぇ。凄いと思わない?コア」
「雷というのが事実ならな」
「あの!」
ビーナが、シドとゲーラの間に入った。シドを庇うようにして、顔はゲーラに向けて話す。
「シドさんのお連れの方の右手に、雷撃の魔術陣が刻まれていました」
「!」
セラを見張っていたのはビーナであるから、その時に陣式の存在に気付いたらしい。
思わぬ味方の登場に、シドは驚きつつもチャンスと笑った。
「ゲーラっつったか?そんだけ偉そうなお前は、雷撃受けてもダメージなんて感じないんだろうな」
「ぐっ……」
「かくいう俺は、回復すんのに5秒かかる。俺自慢の回復力を、お前は笑えんのか?」
ゲーラは答えない。言い返せる言葉が見つからないのだ。
もっとも、獣人族と鬼人族では身体能力に差があるし、何を“強い”と呼ぶかにも違いがある。
シドよりゲーラが劣っているか、もしくはその逆か……それは、実際に戦ってみなければ分からない。
しかし、ゲーラがシドに放った「弱い」という言葉は、否定出来るだろう。
ゲーラ自身既に、心中でそれを認めてしまっているのだから。