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ヒトヒト物語

第2章 水精霊の宿る石


「私達『セイバーズ』は、ここにいる5人ともう一人、計6人で活動してるの」

「その……セイバーズって何なんだ?」

「セイバーズとは!他国を淘汰・侵略し、世界を支配しようと目論む『クラルキア帝国』の、その野望を阻止する為に結成された!抵抗と自衛の組織である!」


身振り手振りを交えながら話す、ケリィ。

シドは、そのテンションに若干引きつつ、そのお陰か冷静にケリィの言葉を聞く事が出来た。


「帝国に対する抵抗組織って訳かよ……この時代に無謀な奴らだな」

「無謀じゃないよ。少人数なりに、これまで何度も帝国の鼻を折って来た」

「でも、セイバーズなんて名前、俺は今まで一度も聞いた事なかったぜ」


恐らく帝国側の政府が情報を操作しているんだろう……それはシドにも予想がついた。

しかし裏を返せば、簡単に握り潰される程度の組織である……とも考えられる。

シドは、抱いた印象そのままに、ケリィとセイバーズに向けて言葉を放った。


「大方、帝国に恨みありって感じなんだろうけどな、帝国は今じゃ竜界の中心だ。お前らに、そんな帝国をどうこう出来る力があるとは思えねえ」

「何だと⁉︎」


真っ先に反応したのは、吸血鬼のゲーラだ。怒りの形相でシドを睨んでいる。

その隣のファルも眉根を寄せていたが、ビーナが宥めた事で、二人は渋々ながらも怒りを抑えた。


「……まぁ、そう思われて当然だよね」


ケリィは、肩を竦ませながら笑う。


「けど、私達には力がある。『精霊石』の力が……ね?」

「!」


精霊石は、世界に八つ存在する。

一つは天界に、一つは魔界に、残りの六つは竜界に……竜界にある六つのうち五つは、帝国の手中にあった。

しかし、衛星国にそれぞれ預けられた二つは『怪盗ジェイン』に盗まれた……そして、ファトムス王国にあった一つも。

帝国の脅威は精霊石だけによらないが、間違いなくパワーバランスが崩れたと言える事態だろう。

シドは、特にそれを強く感じていた……彼は、知っているのだ。

怪盗ジェインに盗まれていない精霊石は二つあるが、そのうち一つは既に帝国の手には無いという事を。


(まさか、こいつら……)

「ふふふ」


シドは、ケリィの笑顔に、初めて冷や汗を浮かべた。


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