第5章 ♡甘い快楽と苦い花
『え...?』
涙を急いで拭き、
めるは満面の笑顔で花臣を見る。
「本当に本当に、美味しいです...!
それに、やっぱり、私が昨日言ったことは
間違いないと思いました...!」
『...?
昨日言ったこと?』
花臣が不思議そうな顔で問いかける。
「はいっ...!
だって、こんな温かいご飯を作れる方が、
幸せな家庭に恵まれないわけありませんから!
花臣さんの家族になる方は、こんな美味しい料理が食べられて、本当に幸せ者ですね...!」
『......っ』
その言葉を聞き、花臣は弾かれたように目を見開く。
「...あ、あの...花臣さん...?」
固まってしまった花臣に、
今度はめるが不思議そうに問いかける。
すると、ゆっくりと、
驚いていた顔が優しい笑顔に変わり...
そっと頬に手を添えられた。
「あ、あの......」
そのまま、何も言わず唇が近づいてくる。
「は、なおみさ...ん、ん...」
ちゅっちゅっ......
優しく、触れるだけの甘いキスに
とろとろに蕩けそうになる。
「ん、んぅ...ぁ...ん...」
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ...
「ぁ...ん、んう...ん...」
『ちゅ...は、あ......』
甘いキスを何度も交わしたあと、
そっと唇が開放される。
『ごめん。本当は今すぐ、君の全部を奪いちゃいたいところなんだけど......料理、冷めちゃうもんね。
今は、これで我慢する。』
「はぁ...はぁ...」
めるは涙ぐんだ瞳で花臣を見上げる。
『ちょっ...もう、そんな顔しないでよ。
我慢出来なくなるから。
早くご飯食べちゃって。その後は...
ちゃんと続きさせてね?』
花臣はめるの頭をぽんぽん、と撫でると
そっぽを向く。
その耳は、赤く染まっていた。