第6章 ♡飼い主不在のペットには
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その夕方、メイドとしての業務を終え、
背伸びをしながら
めるは部屋までの道のりを歩く。
広すぎて最初は迷いに迷いまくっていたけれど
羊に屋敷の地図を作ってもらったおかげで
なんとか1人で自室に戻れるくらいにはなれた。
「羊さんとお仕事をするのは
やっぱり楽しいなぁ...。
ずっとこういうお仕事だけだったらいいのに...」
『えー?
淫乱メイドさんは
そんなんじゃ物足りないでしょ?』
「え......きゃあっ!!」
急に背後から囁かれ、驚きに声を上げる。
急いで後ろを振り向くと、
その見覚えのある顔に
サーッと血の気が引いていく。
「し...凌さん...」
『ふふっ、ちょっと久しぶり。
めるちゃんは相変わらず可愛いね』
女性なら誰もが虜になってしまいそうな、
爽やかで紳士的な笑顔で
ニコッと笑いかけられる。
「あ...えと......」
せっかくの平穏な日常の危機であるこの瞬間を
1秒でも早く切り抜けるにはどうするべきかと
めるは必死に考える。
「あ!...あの...い、今は
ご主人様は、いらっしゃいません!
お帰りになられるのは明後日です!
ので、その、えと...またその日以降に......
でっでは!私は!その...!これで...」
そのまま早足で
その場を離れようと
急いで前に向き直ると、
ぐいっと後ろ手を掴まれる。
「...あ......」
『大丈夫。知ってるよ。
むしろ、それを狙って今日は君に会いにきたんだ。』
「え...あ、の...それは、どういう...?」
怯えながら振り向き尋ねると
ぐっと手を引かれ
耳もとに唇を寄せられる。
『淫乱メイドさんと
誰にも邪魔されない濃密な時間を過ごすには、
ご主人様不在の今が、1番......でしょ?』