第6章 ♡飼い主不在のペットには
『...次の仕事の時間が近づいているから
花臣を呼びに来たんだけど......
うーん...ちょっと、起こすの可哀想だね...』
「...そう、ですね...」
相も変わらず気持ちよさそうに
寝息をたてている花臣を見て
雪臣は悲しげに睫毛を揺らし、ぼそりと呟く。
『........俺のせいで、ごめんね...』
「......雪臣さん...?」
『...君も、ごめん。
色々迷惑掛けて。』
「え?迷惑、ですか?
雪臣さんには、私が謝ることはあっても
謝られるようなことは何もないですよ...?」
『.........そう、かな...』
雪臣が複雑そうな顔をしたーー
その時、めるははっとする。
「て、そうでしたっ...!
私ずっと、雪臣さんにちゃんとお礼も言えてなかったですよね...!あんなに沢山助けて頂いていたのに...本当に、すみません!!
それから、本当に色々ありがとうございました!」
『...え?
なに?......なんの話?』
「だから、そのっ!
道を案内して頂いたり...えと...その...
し、凌さんの件とか...!
この間も心配してくださって様子を見に来て頂いたり
窓のお掃除のことも褒めてくださったり...
本っ当にすごい、色々と...!
沢山沢山お気遣い頂いて...!」
『.........ああ。
あったかもね、そんなことも。
...でも、俺は感謝されるようなことは
これっぽちもしてないよ。』
めるが必死で頭を下げていると
頭上から淡々とした声が聞こえてくる。
『なにをしてもお礼を言われる資格なんかない。
......だから君も、そんな風に思わなくていいから。』
「え...?」
耳を疑うような言葉が聞こえてきて
めるは驚き、顔をあげる。
『......俺が“こう”生まれてきたことによって
沢山の人を苦しめた。
俺は一生、人に感謝なんてされちゃだめなんだよ』
「...なにを、言って...」
『......だって俺は、不良ひ...』
『雪にぃはそんなんじゃないよ。』