第6章 ♡飼い主不在のペットには
まるで甘えてくる子どものように
ぎゅっ...と小さく抱きしめ返される。
『...しばらく、このままでいさせて......
時間も、体力もない、し...
えっちなことは、しない...から...』
そんな彼のあまりの衰弱ぶりに
めるは無意識に花臣の頭を撫でる。
「...疲れてるん、ですね......。
わかりました、大丈夫ですよ」
『.........ん...
頭...きもちい...』
花臣の口から、安心したような吐息が漏れる。
「ふふっ、頭を撫でられるの、好きですか?
じゃあ...よしよしも、たくさんします」
そのまま優しく頭を撫で続けると
無言のまますりすりと、
さらに花臣が顔を寄せる。
羊から聞いた話を思い出す限り、
きっと、単なる業務の疲れだけでなく
精神的な疲れもあるのだろう。
むしろ、もしかすると
大半がそちらを占めているのかもしれない。
精神的な疲れは、肉体的な疲れよりも
ずっとずっと深くダメージを与える。
今の花臣を見ていると
やはり身体というよりも心の方が
何倍も疲れているように感じられた。
「花臣さん...頑張りすぎですよ......
たくさん、たくさん、頑張ったんですね...」
『............うん...』
「今くらいはゆっくり休んでください。
私なんか何もできないけど...
でも、せっかくこうして花臣さんが来てくださったんですから、せめて、花臣さんがもういらない!って帰られるまで
ずっとずっと、ぎゅーって、していますね」
そう言って少し強く抱きしめる。
すると、やっと花臣が小さく笑った。
『...ありがと。
めるちゃん、だいすき...。
......それに、君は、何もできないことなんて...』
「......え?」
『......すぅ...すぅ...』
安心したような、規則正しい寝息が聞こえてくる。
「.........」
その子供のような無垢な寝顔に
めるは小さく微笑んだ。
「お疲れ様です。
花臣さんの悲しい気持ちが少しでも、
早くなくなりますように。」