第6章 ♡飼い主不在のペットには
花臣の身体を支えながら
ゆっくりと部屋に迎え入れる。
力のない花臣をそっとソファまで導き
一緒にそこに座ると
めるは彼の顔を伺う。
「あの...本当に、どうされたんですか?
大丈夫.........ぁ、いや...
......では、ない...ですよね...?」
花臣は俯いたまま顔をあげない。
「あ、えっと......
もしかして、お仕事...疲れちゃいました...?
.........あ、あの、
なにか、私にできることは
ありますでしょうか...?」
その言葉に、本当に小さく
花臣の肩がぴくりと揺れた。
『.........て』
「...え?」
『ぎゅっ、て、して...』
「え、あ、え、えっ...と...」
消え入りそうな小さな声でそんなことを言われ
めるはあたふたと目を泳がせる。
すると、ゆっくりと花臣が顔をあげた。
『.......めるちゃん...おねがい...
ちょっと...限界、なの...。
おねがい...ぎゅって、して...』
雨に濡れた子犬のような目で懇願され、
とてもじゃないけど断れない気持ちになる。
「あ...えっと......は、はい...」
また変なお芝居のような気がしないでもないが
どうしても放っておけず
めるはゆっくりと花臣を抱きしめた。
『...ん......』
花臣はめるの胸元に顔をよせると
弱々しく、すりすりと頬を寄せてくる。
「...ん」
ふわふわの髪の毛がめるの首元を掠め
くすぐったさから小さく吐息が漏れた。
『......いい匂い...
僕、この匂い、好きだな......
安心する......』