第6章 ♡飼い主不在のペットには
「んんー!
.........はぁ、幸せ...。」
月臣が家に不在の2日目の朝。
ベッドの上でうーん、と伸びをしながら
幸せと身体の癒えを噛みしめる。
なんでも、月臣不在1日目だった昨日は、
この屋敷に来て初めての
誰にも襲われずにすんだ日だったのだ。
不在の月臣に抱かれることはもちろんないし、
花臣は業務が忙しいのか
昨日はめるに会いに来ることすらなかった。
のんびりと楽しく羊とお喋りしながら、
メイドらしい業務ができた、
下手したらここ数年で1番の幸せな日......
昨日は、そんな1日だった。
「ずっと、こんな日が続けばなぁ...」
(今日は羊さんと、どんなお話をしよう)
そんなことを考えながら
軽い足取りでメイド服に着替えていると
突然、部屋の扉の前で
ガタンッ!と大きな音がした。
「きゃっ!...な、なに...?」
めるは急いでエプロンを結ぶと、
扉の方へ駆け寄った。
「あ...の...あの...
あ、開けます、ね......」
一体何事だろうと少し怯えながら
ゆっくりと扉を開けるとー...
「きゃああっ!」
その瞬間、いきなり、
ガバッと誰かに抱きつかれた。
『.........めるちゃん...』
耳元で聞こえてきたその力のない声に
めるは目を瞬かせる。
「あ...は、花臣...?さん...?」
いつもの元気はどこにいったのか、
弱々しい小さな声と
重くのしかかってくる体重に
めるはつい心配をおぼえ、
そっと顔を覗き込もうと顔を寄せる。
「あ、の...花臣さん......
大丈夫...ですか...?」
そう問いかけると、無言のまま
彼の頭がふるふると横に揺れる。
「あ...えっと......
とりあえず...中に入り、ますか...?」
すると、また無言のまま
彼の頭がこくん、と小さく頷いた。