第9章 束の間の微睡みを[GE2ソーマ]
代わりに研究を進めるにしても、私とソーマの解釈では確実に相違が出てしまう。少しの相違は後に大きな穴を作る可能性もある。
「確かにねぇ…。最近のソーマは寝不足が蓄積していることが目に見えてはっきりしてきてるね」
「そうなんですよねぇ…。私が言っても何だかんただ応じてくれないし」
「まぁやるだけやってみたらどうだい?案外、今なら素直に応じてくれるかもしれないよ」
「はぁ…?」
そこで榊博士と別れ、カルビに視線を戻す。
「そんなに上手くいくもんかねぇ…」
カルビは可愛らしく小首を傾げるだけだった。
後日、忙しい中また根を詰めて研究に没頭するソーマの元に、ホットタオルと暖かいコーヒーを持ってラボを訪れた。
「ソーマ少し休憩したら?」
「ん?ああ、ユキか」
近くのソファに腰を下ろし、机にソーマの分のコーヒーを置く。一度コンピュータを操作する手を止め、こちらに来てくれた。目元のクマは相変わらずのようだ。
「はい。これ使って」
「これは?」
「ホットタオル。長時間コンピュータと睨めっこしてるんだから、それで目元温めて目も休めて」
あまり根を詰めても効率が落ちてしまう。睡眠をとってもらえないのなら、せめてこまめに休憩を取るよう促そう。これが私に出来る最大だろう。
「気を使わせて悪いな」
「いいえ〜。今日は私も休憩取ろうとしてたところだったし」
そして10cmほどの距離をあけて二人並んでソファに座り、お互いに無言でコーヒーを口にする。