第9章 束の間の微睡みを[GE2ソーマ]
極東支部前支部長ヨハネス・フォン・シックザールにより、秘密裏に進められていた人類救済計画が凍結されて数年後。当時第一部隊の隊員だった私たちは現在、独立支援部隊クレイドルの隊員としてオラクル細胞の研究やサテライト拠点への支援を主に活動している。
ソーマはレトロオラクル細胞の研究をしており、私はその手伝いをしながら彼と共にゴッドイーターとしての本来の仕事もこなしていた。
研究はそれなりに順調だった。順調だったが、ソーマは最近睡眠時間を削ってまで研究に時間を割いている。
日に日にその色を濃くしていく目元のクマに私はため息をついた。
「はぁ…研究に精を出すのはいいけど、それで任務に支障をきたす事態になったらどうするのよ…」
少しでも休んでくれればいいのだが、いつもなんだかんだでどうにもはぐらかされてしまう。
「どうしたら休んでくれるのかしらねぇ…。ねぇカルビ」
ラウンジのソファに腰掛け、カピバラのカルビになんとなく話しかけてみる。もちろん人の言葉を解さないこの子にはなんのことだか分からないだろうが。
思い返せば、ソーマはいつも自分自身のことは後回しにしていた気がする。リンドウが廃都の教会に閉じ込められてしまった時は率先して退路を確保してくれていたし、シオがいなくなった時なんかは進んで捜索に出てくれた。今している研究だって結局は戦う術を持たない一般人の為。
「どうしたんだい?そんなに思い詰めた顔をして」
「あ、榊博士」
ペイラー・榊支部長代理。極東支部の支部長が不在となっている今、彼が代理としてこの極東支部を統括してくれている。彼も彼で大変な仕事を請け負っている。
「実は…ソーマにちゃんと休息をとってもらうにはどうしたらいいのか悩んでまして。私もなにか手伝えればいいのだけれど…」