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第8章 終焉に向かいし王[羽張迅・迦具都玄示]


赤のクランの拠点に着くと、クランズマン達が出迎えてくれた。
「玄示、久しぶり」
「また来たのかお前」
「そんなこと言って嬉しいクセに」
「ぬかせ。…アイツは」
「迅のこと?あの人なら近くの物陰で見守ってるって」
ふと室内を見回すと以前来た時よりものが少ない印象を受けた。
「…玄示いなくならないよね?」
「あ?何だ急に」
「いなくならないで玄示!」
私は堪らず玄示に縋り付くように抱きついた。彼がどこか遠くに行ってしまう気がして。
「私…あなたのこと――」
「それ以上は言うな」
「玄示っ!」
「知ってるんだろ?俺の剣(つるぎ)が暴発寸前の爆弾だってこと。もう限界なんだよ」
何も言えなかった。彼が言ったことは事実なのだ。
王が能力の行使を行なった際に上空に出現する「ダモクレスの剣」。それは力を使い続ければいずれ暴走し、剣の墜落――ダモクレスダウン――を引き起こす。ダモクレスダウンが引き起これば大規模な爆発を起こし、他の王を巻き込んだ場合累乗されその被害規模は計り知れない。
そして迦具都が言った通り彼のダモクレスの剣は既に限界なのだ。
勿論セプター4の長であり青の王である迅は玄示を止めようとするだろう。もしダモクレスダウンに巻き込まれでもすれば、二人共――――。
「やだよ…!漸く信じられる人ができたのに…!」
「聞き分けろ。お前ならうまくやって行ける」
「玄示…」
それは彼にしては珍しい優しさの込められた言葉だった。彼のことをよく知らない人からすれば優しさなど感じないかもしれないが、迦具都玄示という人は普段こんなことは言わない。
(この人は本当に覚悟してるんだ。自分の運命を)
その覚悟を感じ取ってしまったのなら私ができることはただ一つ。段々と滲む視界をぐっとこらえ、精一杯の笑顔を返した。
「わかった。…さよなら、玄示」
「早く行け」
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