第5章 この灯火が消えるまで[平和島静雄]
「…、…てくだ…い、雪音起きてください」
「ん…」
四木さんの声だ。いつもは自然に起きるまで起こしてきたりしないのに…何かあったのだろうか。
「貴女にお客人です」
「おきゃくさん…?」
そして遠のく足音とくれぐれも無理はさせないように、という一言を聞きながらのそのそと起き上がる。ダルさは幾分かマシになったようだが、まだ眠気が残っていてイマイチ覚醒しない。
「体調良くないのに押しかけて悪い」
その声を聞いた瞬間、微睡んでいた意識は瞬時に覚醒した。
「え!?し、しししし、静雄さん!?ななななななんで…っ」
急にあたふたと動いたせいで目眩がし、自然と眉間にシワがよってしまう。
(というか…)
「なんで静雄さんがここにいるんですか?」
「お前につたえなきゃならない事があって」
はて?伝えねばならないこととは一体なんだろうか。というより想いを寄せる人が目の前にいるのにこんなだらしない格好を着替えたいのだが。
「最初、お前が俺にとる行動は鬱陶しいことでしかなかった。当然イラつきもしてた」
でしょうね。当時すっごく怖かったもん。
「でも、別に嫌な感じはしなかったんだ。だから無理に振りほどいたりもしなかった」
「そういえばそうですね。私1度も無理やり振りほどかれたことないや」
(ん?まてまて、そうなると…いやいやいや!)
自惚れてはいけない。私の命はあと1年。もし仮に自惚れた通りだったとしてもOKを出すわけには行かない。
「それでお前が1週間1回も俺のところに来なかったことで俺が本当は天霧をどう思ってたのか気づいた」
嗚呼、これは自惚れどうこうではない。ほぼ確実だ。
(ホント、どうして神様はイジワルするのかな。わたしの覚悟が揺らいじゃうじゃないか)