第5章 ミステリートレイン
ふとこそこそと話す声に視線をずらすと、灰原とコナンが話をしている。
辺りを見る彼女の顔は少し強張っているようにも見えて、葵も気付かれないように辺りを探るが、おかしな人物や物は見当たらない。
結局灰原の表情が明るくなることはないまま8号車に到着した。
「ここよ!ここがうちらの部屋!ちょっとおじさん!もうトリックバレちゃったわよ!」
「おじさーん!寝てないでチェーンロック外してよ!」
「どうしたの?」
「あのおじさんがソファでうたた寝してるのよ!こめかみから血を流して、まるで死んでるみたいにね!」
「「え?」」
「ちょっとどいて!」
「扉を破ろう!」
「いっせーの…」
バン!と勢い良く開いた扉の向こうを確認しようと踏み出したとき、白い手に腕を強く引かれたたらを踏む。その持ち主である灰原は葵と目を会わせると首を横に振った。
「すっげー!」
「また推理クイズですか?」
「いや…、本当に死んでるよ…蘭くん葵を頼む」
「う、うん!」
中に入った世良の言葉に蘭は中が見えないように立ち、灰原に「ここに居なさい!」と扉の外側に連れていかれた為、中の様子に耳を傾ける。
どうやら自殺に見せかけた殺人らしい。2人が詳しく話すので、大体の状況は把握することができた。
.