第4章 新たなる
沖矢の言葉に二人はぱっと笑顔になった。よかった…、裏で何考えてるかわからないけれど助かった、有り難うございます、沖矢昴さん。本当に。
「そうよ!これから楽しいことをいっぱい教えてあげればいいのよ!」
「そうだね!昴さん、ありがとうございます!葵ちゃん、私たちと友達にならない?これから楽しい思い出いーっぱい作ろう?」
「いいね、ボクも乗った!」
「ボクも!」
名案だと目を輝かせる二人に、これから事件に巻き込まれることが多くなりそうだ…事件に慣れる努力(?)しなくちゃ。なんて大きく頷く葵の顔は今日一番の笑顔だった。
忘れないうちにと蘭がスマホに沖矢以外を登録してくれた。彼は充電切れと言っていたが、教える気はないだろう。
そのあとは、世良が電話先の高木刑事にキレたり、新一が金一になっていたりといろいろあったが、沖矢からの提案と世良の後押しもあって、新一の推理を聞くために電話することになった。
「ついでに蘭から新一くんに告り返すんだから♡」
『そうなの?蘭ちゃん頑張って!』
「えー!?葵ちゃんまで!」
「ボクちょっとトイレ!」
若いなー。
顔を赤くする蘭と走っていくコナンに甘酸っぱさを感じながら、からこれ10年は前になる自身の青春にショックを受けた。
─い、今は5歳だし。青春これからだし…。
それにしても、園子からの好き好きコールもむなしく好きが昴さんになってしまった蘭は可愛かった。
「昴さんが言ってたの!新一はまるで霧隠才蔵だって!そう言っといてくれって…」
「あぁ…姿を隠してるからか?」
「う、うん!多分…」
「でも何で今その話?」
もう!と呆れている園子に苦笑する。初々しくて可愛かったけれど、園子は速くくっついて欲しいのだろう。
って違う。今は霧隠才蔵の話だ。
霧隠才蔵とは、真田十勇士の1人。真田幸村の家来であり、猿飛佐助と並び大阪の陣で活躍した。猿飛佐助を原型に創作された架空の人物である。
沖矢が言いたいのは真田の旗印、六文銭のことだろう。
あの「死」の文字が小銭とタバコで偶然できたものだったのだとその言葉で気づいた。10年前の文字も少年が置いた花とドロップ、園長の指でこれまた偶然できたのだ。
工藤優作氏は少年を守るため公表しなかったのだと納得している間に、蘭の電話は切られていた。
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