• テキストサイズ

【名探偵コナン】幼女になりました。

第9章 兄と親バカと花見


「あら、服だけなの?私は葵ちゃんが可愛いって言ったんだけど?」
「だよな、お前はそっちだと思ってたぜ…」

はっとした後あわわと慌てだす子供たちにわかっていると頷くと、途端に安堵の表情を浮かべる。ツボが浅くなっているのか、それにすらくすくすと笑いだす灰原にジト目を向けたコナンが声を張り上げた。

「オメーら桜見に来たんじゃねぇのかよ?」
「勿論見ますよ!お花見ですから!」
「桜!ここからでも見えるね!」
「腹減ったから早く行って弁当食おうぜ!」
「そうじゃな。ほれ皆頭を下げるんじゃ」

博士の言葉にふと上を見上げた。
聳える朱色の鳥居から参道には提灯が付けられ、本堂へと一列に続くそれは風によってくるくると花見客をもてなすように舞を踊る。

全員で一礼して潜り抜け参道の端を歩く。見事なまでの桜に安室の注意虚しく上を見上げたまま目を奪われていると、先頭を行く博士と共にいたはずの灰原がいつの間にか葵の隣を歩いていた。

「さっきはごめんなさい」

“私のせいで時間を使わせてしまって…”と謝る横顔を見つめた。

「…嬉しかったの」

鳥居を潜る前同様に首を傾げると小さく笑い、きゅっと手を握る。

「やっとあなたと綺麗な記憶を共有できるって思ったら嬉しくて…柄にもなく燥いでしまったわ」

“情けないわね”と言葉を紡ぐ表情は嬉しそうに緩められている。その時、ザアッと強く吹く風が役目を終えて散らばる花弁に命を吹き込んだ。

幻想的、それ以外に当てはまる言葉が見つからない。桜が少女と戯れているような光景に葵の口が感嘆の声を上げた。

桜の精からの思わぬ褒美に頬が紅潮したまま目尻を下げる。その笑みを見た灰原が瞠目し足を止めると”早くー!”と急かす少女の声と揺れるウサギが目に付いた。

『わたしも哀ちゃんと桜見れてすっごく嬉しい!忘れないよ。ずっと、ずっと!』

繋がれたままの手を引きながら振り返ると新緑から朝露が落ちる錯覚を見た気がした。






兄と親バカと花見Fin.
/ 127ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp