第7章 現状
「でも偶にその班でも口を割らせない鉄腸漢が現れる事もあった。そんな時は私か紬が助太刀したよね。私が訊いても口を閉ざした儘の捕虜が一人でも居たっけ?」
太宰は妖しく笑うと扉の鍵を掛けた。
その顔に恐怖を抱いたのか紅葉の顔は青い。
「此処からは大人の時間だね」
太宰は腕を鳴らしながら愉しそうに告げた。
その様子を見て紅葉は小さく息を吐き、答える。
「知らぬ」
「小さいことでも何でも良いよ」
ギイッと音を立てた椅子に太宰が腰掛ける。
「じゃあお主に問うが。太宰、誰を敵にまわしているかちゃんと自覚しておるかえ?」
「……。」
紅葉の問い掛けに一瞬だけ目を見開き、黙る。
「先刻はああ云ったが、結局、其方の首捕りに誰も動かぬのは『誰』の力が働いていると思う」
「……判ってます」
目を反らし、息の混じる小声で返事をする。
「太宰」
「はい」
「紬は疾うに限界じゃ。そんな紬が其方と敵対するならば……如何なる手段をとるか、なんぞ私の知る由でない事くらい想像に難くなかろう?」
「……。」
紅葉の言葉の後に沈黙が流れる。
紅葉は何かを考えている様子の太宰に声をかけることもなく。
唯唯、太宰を見ていた。
「姐さん」
「なんじゃ」
漸く太宰が口を開く。
「私と取引しません?」
その切り出された噺に僅かに驚いた様子の紅葉だったが小さく息を吐いて続きを促した。