第6章 開戦
スタスタと歩く中也の隣でブツブツと文句を云い続ける紬。
「飲み足りない」
「終わってから飲めや」
「奢ってくれるの?」
「阿呆か!」
「ちぇっ。仕方無い。今日は中也の家のワインで我慢するよ」
「あ゙?絶っっ対に家に入れねぇからな!?」
「いいよ、入れてくれなくても。勝手に入るから。困るのは誰だろうなー」
「~~~~~~~っ」
反論しようとして、ガクッと項垂れる。
それを愉しそうに見ている紬。
「……ちったあ機嫌戻ったかよ」
「んー………如何だろう」
「いい加減、兄妹喧嘩を終わらせろ。巻き込まれる方の身にもなれ」
「そうは云ってもねぇ……」
「……。」
後頭部で手を組んで、空を仰ぐ。
「中也は私が裏切ったら如何する?」
「堂々と手前ェを殺す」
「え?殺してくれるの?別に今でもいいけど」
「太宰の方が先だ」
「えー……。そしたら私が中也を殺す事になるから私は死ねないじゃん」
「そうかよ。そりゃ残念だな」
「本当だよ」
むーっと眉間に皺を寄せて、むくれる紬。
「出てんじゃねぇか、答え」
「……。」
そんな紬を横目で確認して中也は云った。
空を仰いだまま。
帰り着くまで紬が言葉を発する事は無かった。