第20章 忘却
紬達と別れて、眠い目を擦りながら書類と格闘すること早くも4時間ーーー。
時刻は既に午前3時を迎えようとしていた。
「眠ィ……」
「……だな」
部下達は帰社途中に購入した栄養剤を片手に目を擦りながら仕事を行っていた、が。
「矢っ張り落ちちゃったか」
「表向き勤務の人間だったら慣れてないよな、こんな遅くまで仕事なんて」
机で伏せてしまっている山吹を見ながら苦笑した。
「ただですら中也さんの安否が気になって寝不足だっただろうしな」
「だな。仮眠室に連れていくか」
相手が女性だと云うこともあり2人で担ごうとした時だった。
ガチャリと。
何の合図もなく扉が開く。
「「あ。」」
「あ"?」
入室してきた人間とバッチリ目が合った。
目が合うなり顔を歪めた男に慌てて近付く部下達。
「手前等、帰れってあれ程云っただろうが!」
と云う積もりで「て」まで発音したところで片方に口を押さえられ、片方にシーっ!!とされた中也は言葉を飲み込んだ。
そして2人が同時に指差した方向を見て納得したように中也は肩をすぼめる。
「だから帰れって云ったのに………ったく」
ヒョイッと山吹を横抱きする中也。
「おー。これは面白い光景だねぇ」
「!?」
突然、ヒョコッと扉から顔を出した紬に冷やかされる。
が、腕に居る山吹はスヤスヤと眠っているため云い返したいが云い返せず中也はワナワナと震えている。
「チッ。何方か付いてこい」
「あ、はい」
紬に構うのを止めて中也は部下その1と共に仮眠室へと向かっていった。