第3章 出会
パタンッ
静まった部屋に妙に響いた音を聴き終えて紬はスタスタとソファに座る。
「君も掛け給え」
「………。」
笑顔で云われた。
が、有無を云わせない何かを秘めている言葉。
樋口は大人しく従って、座った。
「芥川君の相棒かー。初めまして」
「初めましてって……貴方は……」
樋口は目の前の人物をまだ疑っている。
「その様子だと芥川君は何も教えてくれなかったのか」
「!?」
樋口の反応に、紬は溜め息を着く。
「ねぇ―――芥川君?」
ガチャリと音を立てて入ってきた人物に向かって云い放った。
「芥川先輩っ……!」
「っ…!紬さん……何故、此処に……」
入ってくるなり目を見開いて、驚く芥川。
その芥川の反応に驚く樋口。
「君の相棒を見に来たんだよ」
「……。」
芥川は何も云わずに固まっている。
そんな芥川をよそに紬は樋口の方を向いた。
「私は太宰。君がこのあいだ遭遇した『武装探偵社の太宰』の片割れだ。宜しく頼むね、樋口君」
「かっ…片割れ……!?」
「そ。私はここ最近、あまり出歩かなかったから知らなかったのだろう。以後、お見知りおきを」
ニコッと笑って紬は立った。
そして、未だに動かない芥川の横を通り過ぎる。
「如何して云わなかったんだい?治に遭ったこと」
「っ……僕は…っ」
紬は扉のノブに手を掛けて、漸く芥川の方を振り向いた。
「まあ善いよ。『君』が治に勝てるわけ、無い」
「っ!」
芥川も漸く紬の方を見る。
然し、紬はそのままその場を去っていったのだった。
樋口は何も云わずに芥川を見ていた。
否――――――云うことが出来なかった。
暫く気不味い空気が流れる。
そして、芥川は何も云わずに部屋から去っていった。
「先輩っ…!」
追い掛けようとして、ハッとする。
首領から呼ばれていたことを思い出したのだ。
樋口は理由も状況も何もかも。
凡て何も判らぬまま、重い足取りで首領の元に向かったのだった。