第18章 本心
紬は自分の執務室でパラパラと書類の束を見ていた。
中也の部下2人の姿は其処には無い。
目の前に詰まれた書類の3分の2を片付けたところで来室を報せる叩敲が響く。
「どーぞ」
許可すると伝令の男が入室してきた。
「失礼します。××の身柄が間もなく到着とのことです」
「ああ、そう。牢に入れておいてって云ってたんだけど先に片付けるから矢っ張り壁に繋いでおいて」
「承知いたしました」
一礼して伝令が去ろうとしたと同時に本日2人目の来客が叩敲を行ったようだ。
「どーぞ」
「…失礼します」
入ってきたのは山吹だった。
「おや、山吹君」
「お早う御座います」
「おはよう。如何したんだい?中也なら明日までは確実に不在だけど」
「中原さんが不在の間、太宰さんに様々な事をご教授頂ければと思いまして」
「おや。中也の分の事務処理は大丈夫なのかい?」
「はい。大方、目処が。後は私では処理も判断も出来かねるモノばかりなので」
「そう。あ、丁度良かった」
ドンと積まれた紙の束をポンポンと叩く。
「コレ、中也の部屋に運んでくれないかい?」
「あ……はい」
「運び終わったら直ぐに戻っておいで。良い機会だから君にも見せてあげよう」
「え?」
ニコッと笑って云う紬に返事が出来ず、山吹は取り敢えず書類を運ぶことにした。
そして数分後に戻ってきた時には紬は既に部屋の前に居た。
「もっ…申し訳ありません!」
「ん?何が?」
「お待たせしてしまって…!」
「ああ、そんなこと」
ふふっと笑って歩き出した紬にパタパタと着いていくことにした。
幹部専用のエレベーターに乗り向かった先は地下。
ーーー『捕虜』を収容する場所だ。
ポートマフィアに入り、未だ数ヶ月と云うキャリアのため、はじめて踏み入れる場所に山吹は少し緊張していた。