第17章 芽生
『上手くお役に立てるでしょうか』
『大丈夫だろ。抑も紬に憧れてンだろ?良い機会じゃねーか』
『完璧なお方だと聞いております故、先日の失態の後では……』
『あの莫迦の何処が完璧なんだ』
『……反応に困ります』
『だろ?深く気にするな。前も云ったが彼奴は大抵の事を次の日には忘れてる』
『……本当ですか?』
『嘘は云わねぇよ。まあ、性格は問題しかねーが仕事に関しちゃある意味、超一流だ。勉強になるだろ』
『判りました。勉強させてもらってきます』
『その調子だ。何かあればまた連絡してこい』
『はい、有難うございます』
『ちゃんと乗り切れたらメシでも奢ってやるよ』
『えっ……本当ですか!?』
『嘘付くわけ無ェだろ。じゃ、頑張れよ』
『はい!全力で頑張って参ります!!』
漸く途切れたやり取りの最後を読み終わると中也は端末をテーブルに放った。
「お子様が使う口説き文句か。確かに違い無ェな」
温くなった紅茶を飲み干して、中也は掃除を始めるべく立ち上がった。