第16章 暗雲
「いえ……それが異能者だったようです」
「何…?」
「!?」
男の報告に中也と山吹が揃って反応する。
「あの状況で俺抜きでも其奴を仕留められたのか?」
中也の言葉を否定するように首を横に振る2人。
「先ずあの時、中也さんと攻め込んだ人間は山吹さん以外全員未だ眠っています」
「………眠ってるだけってことは目的は初めから俺一人だったってことか?」
「かもしれません……山吹さんは中也さんに、その……」
部下の一人が顔を紅くしながら中也と山吹をチラッとみて口ごもる。
「何だよ」
「その………確りと抱擁をされていたみたいで……無事でしたし……直ぐに目も覚ましました………」
「!?」
カアッと顔を赤く染める山吹。
「っ………それでっ……」
つられて顔を赤らめた中也は照れを隠すように続きを促す。
「此方側の戦況は私達に勝機が傾いていました。なので一斉に退いていきました………とその事を不審に思って中也さんに指示を仰ぐために無線を繋いだんですが」
「反応がなかったから指示通りに敵を追わずに俺の元に駆けつけた、と」
「「申し訳ありません」」
「謝るな。そのお陰で命拾いした」
中也はハァ、と息を吐いた。
「んで?殲滅に失敗した筈なのに俺達が眠ったのが『異能力』のせいだって云い切った?」
「つい先刻、殲滅完了しました」
「は?」
「太宰さんの指揮の元、我々2人と芥川さんの3人で………」
「……。」
中也は黙った。
色々と考えているようだがその事を一切口にはしなかった。
「あの……」
山吹が声を発した。
「何だ?」
「私達が20人で攻めて不可能だった殲滅を4人で……本当に?」
「「……。」」
部下2人の顔は青い。
中也が口を開こうとした時には目的の場所に辿り着いたところだった。
「続きは中でな」
中也は叩敲してから部屋に入った。