第14章 双子
「つまり、この事件は全く解決してないと云うことだな?」
「流っ石、国木田君!その通ーり!」
太宰が拍手する。
少し小馬鹿にしている風だったのが伝わったのか「巫山戯るな」と怒鳴られる。
「が、これ以上『手を出すな』ーーーだろ?太宰」
「その通りです乱歩さん」
「!?しかし、そんな危険なこと放って置く訳には…!」
「手の打ちようがないのだよ。私と敦君も実際に毒に充てられて判ったが正体は『無色無臭の気体』の様だ」
「!?」
「此処で私たちが騒げば、犯人たちの目的も判らないまま世間が混乱に陥るだけだ」
「市警が気付かず、世間に気づかれる前にーーーー糞っ、仕方無いのか!」
国木田がドン、と机を叩く。
そして、ハッとした。やり残していることが未だあった事を思い出したのだ。
「そうだ!研究室の講師っ……!」
ピリリリリ………
タイミングよく鳴り響く電子音。
発信源は太宰の懐だった。
一瞬にして嫌な予感が会議室を包んだ。
「もしもし」
『とり逃がした』
「殺された可能性は無いの?」
『その様な痕跡どころか、自宅はここ何日も帰宅した気配がないーーー黒幕に間違いないだろうね』
「そう。ところで何処に『盗聴器』を仕込んでいるんだい?」
『敦君のポケットの中だけど?』
太宰は敦に近付いていき、ポケットの中に手を入れてた。
「!?」
ヒョイと取り出したのは小さな四角の機械。
正に盗聴器だった。
「あんまりウチの子虐めないでよ」
『愉しいひとときだったからね。1つにしといたよ』
「それは随分と優しいことで」
『うふふ。じゃあ中也にすっごい睨まれてるから切るね』
「うん、また」
電話と盗聴器のスイッチを同時に切る太宰。
「いつの間に………」
「ふふっ。この程度、紬なら何時でも仕掛けられるよ」
項垂れる敦を慰めるように鏡花がポンポンと背中を叩く。
「逃げられたようだね」
「その様ですね」
「『黒』なのは間違いないとマフィアに確信させちゃったわけだ」
「はい。所詮、素人ですし……」
「まだ何かあるのか?」
「いや、ただーーー」
全員が太宰に注目し、二の句を継ぐのを待っている。
「相手が悪かったな、って」
太宰は苦笑しながら云った。