第10章 激しい雨の中で
【智】
あ……何かドキドキした。
ほんのちょっとだけなのに、
触れ合った指先から電流が走ったみたいになって…
息が止まりそうだった。
「た、食べよっか…」
「あ、うん…」
翔くんに借りたTシャツを頭から被った。
ほんの少しだけ温かくて、
なんだか…翔くんに包まれてるみたいで…
…ちょっとだけ、幸せだった。
「ほら、お湯入れるよ~」
「は~い」
翔くんの好きなノンフライ麺しょうゆ味と、
俺の豚骨ちゃんぽんにお湯を入れ、
出来上がるまで待つ。
……待つ…
あ…沈黙…
えっと…どうしようか…
「少し大きいかな?」
翔くんの方から話を振って来た。
「大きい?」
「Tシャツ…」
あ~、何だTシャツの事か…(^^;
「そうだね…なんか、翔くんの匂いがする…」
「なっ///何言ってんの…」
…翔くんが赤くなるから、俺も赤くなるじゃんか!
今までにない、不思議な空気が、
二人の間に流れている。
こんなの…初めてだ。
そう言えば、あの夜から、
翔くんとこんなにちゃんと二人っきりになったの、
初めてかもしれない。
ピピピピピッ♪♪♪
タイマーが鳴った。
「で~きた♪」
なんてことはない。
翔くんが、カップ麺が出来上がる時間を、
セットしていたんだ。
「そんなの適当でいいのに~」
「いや、最高の美味しさで食べたいじゃん!」
「ふふふ、翔くんらしいよ…」
翔くんの匂いのするシャツを着て、
肩がくっつきそうなほど近くで、
熱々の豚骨ちゃんぽんを頬張った。
そんな空間が溜まらく愛しくて、
俺は何だか泣きそうで…
麺をすする音で誤魔化すように、鼻をすすった。