第10章 激しい雨の中で
【翔】
願えば叶うもんだな~♪
俺、ついさっき、カップ麺食べたい、って。
そう思ってたもん!
こんなことなら、もっといいもの願えばよかったよ…
まあ、それは冗談だけど(^^;
ポットに水を入れながら、肩を並べてカップ麺の包装を剥がすと、智くんの肩が濡れていることに気付いた。
「智くん…Tシャツ、濡れてるじゃん」
「えっ?ああ、こんなの平気だよ」
「ダメだよ!風邪ひいたらどうするんだよ!
俺の貸すから、着替えろよ~」
「いいって!」
「ダメだよ!」
俺は無理やり、智くんのTシャツに手をかけて、上に引き上げた。
触ってみると、思ったよりも湿っていることに気付いた。
「もう~!!こんな、濡れてるじゃん///」
「ちょっ///」
「……」
「…いいのに~…ほっときゃ、乾く……翔くん?」
突然、現れた智くんの肌…
まあ、俺が脱がしたんだけど…
無駄のない、しなやかな筋肉に、
あの夜の記憶がフラッシュバックする…
「…Tシャツ、持ってくるよ…」
俺は、逃げる様に階段を駆け上がった。
部屋のドアを閉めて、気持ちを落ち着ける…
目を閉じると浮かんでくる、
智くんの鞭のようにしなやかな身体…
甘く鳴く声…
汗で光る肌…
そして…そして…
俺は、生々しく頭に浮かんでくる智くんを追い出すように頭を振った。
慌ててタンスから、洗濯済のTシャツを掴んで下に戻った。
上半身裸で突っ立っている彼に、
動揺を悟られないように、持ってきた着替えを渡した。
「ありがと♪」
Tシャツを手渡そうとして、
一瞬だけ、指先が触れた。
智くんが、慌てて手を引っ込めるのを
俺は、不思議な気持ちで見つめていた。
その時。
……お湯が…沸いた。