第9章 虹の欠片
その後、母さんが買い物に行くというから、
必然的に家の中には俺と翔くんになった。
「…あ、これ、おじさんのお土産~?」
どことなくソワソワと落ち着かない翔くんが、
棚の上のボトルを見ながら言った。
「あ、それ一個翔くんちに持ってけって、
父さんに言われてたんだよ…忘れてた…」
「そうなの~?帰って来ても忙しそうだもんね~」
「うん…一週間って言っても、家にいたのは1日くらいだったよ~…どっちがいい?好きな方あげるよ」
翔くんはドバイ土産の
『サンドボトル』を手に取って、
色んな角度から眺めている。
「ねえ、翔くん…潤のこと好き?」
俺の言葉に、翔くんはピタリと手を止め、
こっちは見ずに、
「これ!こっちにする!オレンジ色のグラデーションがさ、なんか凄いラクダを際立たせてるよね?
そう思わない~?」
「あ…うん…そだね…」
さっきから、何かにつけて、翔くんの様子が変な気がするけど~?
何だろう?
俺には全く、心当たりがなくて。
翔くんは、オレンジから赤に変わっていくサンドボトルを持って、ゆっくり俺の方に顔を向けた。
「…潤の事…好きだよ…」
あ~、なんだ、ちゃんと聞こえてたんだ。
聞こえてないのかと思っちゃ…
「なんで?」
「えっ?」
「どうしてそんなこと、急に聞くの?」
どしてって……
翔くんの大きな目が、俺をじっと見つめた。
俺の心の奥までも、
見透かす様な、真っ直ぐな瞳…
今度は、
視線を反らせたのは俺の方だった。
やましいことがあるから…
翔くんに知られている訳もないんだし…
やましい気持ちが…
俺の中にあること。