第9章 虹の欠片
翌日。
母さんが田舎からたくさん野菜を送ってもらったから、お隣さんに持って行けっていうから…
俺は少し緊張しながらお隣の玄関を開けた。
「こんにちは~、お邪魔しま~す!」
すると、リビングからおばさんが顔を出した。
「あ~、翔ちゃん、いらっしゃ~い」
「これ、野菜のお裾分けです!」
「わあ~、嬉しい!ありがとね…
智~!智~?翔ちゃん来たよ~」
「あ、あの…潤は…」
狼狽える必要もないのに、
何か顔を合わせずらいって言うか…
「潤は夕べ、お友達の家に泊まるって…
全く、何やってんだか…」
そっか…潤、泊まりだったんだ…
そう言えば、この頃多くなったな~…
友達のとこ泊まること。
そんなに仲のいい友達って…
「あ、翔くん、いらっしゃ〜い」
ドキンッ!!
心臓が音を立てた。
智くんが、ゆっくりと階段を降りて来た。
……いつもの、智くんだ…
穏やかな笑顔…
ゆっくりと俺の側まで来て笑っている。
「なに~?変な顔して…」
「変な?そう?…そうかな?」
「何言ってるの智、翔ちゃんはいつもと変わらずイケメンよ~?ねえ~♪
ほら、こっちでお茶でも飲みましょうよ…」
その後、俺は智くんのお母さんと智くんと3人で、他愛もなことをおしゃべりしながらお茶を飲んだ。
智くんは、いつもと変わらない笑顔と、
のんびりした口調で話していて…
夕べ俺が見た智くんとは、
別の人みたいだった…
……でも、夢じゃない…
聞いたことの無いような、艶っぽい声で、
俺の名を呼びながら…
俺は話に加わる振りして、
智くんの綺麗な横顔を、見つめていた。
智くんは……
俺が見てしまったことを知ったら、
どうするんだろう…?